取材協力:カワサキプラザ水戸 取材:小川 浩康/撮影:コイズミ ユウコ
掲載日:2025/12/08
国産メーカーの販売や整備、ドゥカティ専門店としてショップ活動してきた『オートボーイRC』が、カワサキの専売店「カワサキプラザ水戸」になって早3年を迎える。お客様へのサービス体制を充実させるため、2026年中の民間車検場とも呼ばれる「指定工場」取得を目指している。
今回、『オートボーイRC』時代から培ってきた技術をベテランから若手へ継承し、「カワサキプラザ水戸」のさらなる充実と発展に尽力してくれる整備スタッフを募集する。
代表を務める高野さんは1966年生まれで、中高生の頃がバイクブームだった世代。鈴鹿8耐にライダーとして何度も参戦した経歴があり、高いライディングテクニックと整備スキルを持ち、行政書士の資格も所有するスーパーマン。
高野さんは鈴鹿8耐の参戦経験がおありですが、そもそもバイクに興味を持った経緯からお聞かせ下さい。
高野代表:私が幼稚園に入る前から祖父がトラックを解体していたため、クルマやバイクがとても身近にあり、自然と興味を持つようになりました。中高生の頃はバイクブームで、兄がバイクに乗っていた影響があり、大学で自動車部に入ってレースを始めました。その時に将来はバイクショップを経営したいと思っていました。
大学卒業後はレースメカニックの紹介で、塗装屋に入りました。その後、1年間ヤマハの工場で働いたり、営業職のサラリーマンを7~8年勤めたりして、30歳で水戸市内に念願のバイクショップを開店することができました。メーカーを問わない街のバイク屋さんとして5年くらい運営し、前身となった『オートボーイRC』を開業しました。
2013年"コカ・コーラ ゼロ" 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第36回大会に参戦時の高野代表のワンショット。SUZUKI GSX-R1000で戦い、決勝レースリザルトは総合39位でチェッカーを受けた。
念願のバイクショップ開業から、カワサキプラザになられた理由はなんですか?
高野代表:『オートボーイRC』は、メーカーを問わずバイク販売、整備、修理をする街のバイク屋さんとしてやってきました。その過程においてドゥカティのディーラーとして、活動していた時期もありました。丁度、国内のバイクメーカーがディーラー制度に移行していき、街のバイク屋に新車が回ってこなくなってきました。お客様がバイクを買いたいと思ってメーカーに問い合わせた情報も私たち(街のバイク屋)には伝えられず、新車販売のルートはディーラーしかなくなっていきました。私はバイクショップを始めたいと思った時から、新車販売をしていきたいという強い気持ちを抱いて経営してきた背景があります。そこを絶たれてしまうのは、気持ち的にも経営的にも厳しいもので、そこでカワサキプラザへの転進を決めました。
いくつかあった選択肢からカワサキプラザを選んだのは、かつて“カワサキ”に憧れた気持ちと現行ラインナップが、スポーツバイクのみというところでした。私がバイクに興味を持った頃、部屋のベッドの上には、バイク雑誌の付録だった“Z1R”のポスターを貼ってました。速さを感じさせるスタイリングがカッコ良く、いつかはこういうバイクに乗ってみたいと、カワサキのバイクに憧れていたのが理由です。
『オートボーイRC』時代は、原付スクーターからホンダのゴールドウイングといった大型車両まで整備していましたが、スクーターと大型バイクでは整備内容が全然違い、整備や修理などの作業ノウハウを蓄積するのに大変苦労しました。そして、そのノウハウをスタッフ達に伝えていくのも大変でした。
3年前に新車はカワサキ専売の「カワサキプラザ」としてスタートしましたが、その一方ではカワサキ車以外のバイク修理も受け付けています。ネットオークションでバイクを購入された方や行きつけのバイクショップが閉店してしまったりと理由は様々ですが、車両の整備や修理に困っている方が非常に多くなっています。パーツ供給や整備施設などの関係で依頼をお断りすることもありますが、『オートボーイRC』時代に培ったノウハウを生かし、幅広い車種に対応しています。
『オートボーイRC』は私が独立前に勤めていた筑波にあるバイクショップ“オートボーイ”から名前をいただいたのですが、今後は“オートボーイ”との提携を強めて、国産メーカーの整備を充実させたいと考えています。カワサキプラザとして、カワサキ車の新車販売とアフターケアに注力しつつ、他メーカーの修理も受け付けていくのが「カワサキプラザ水戸」の特徴のひとつだと思います。
2026年中に「指定工場」としての稼働を目指しているとお聞きしました。
高野代表:2026年1月に「カワサキプラザ水戸」はオープン3周年を迎え、その当時に新車購入していただいたお客様は車検時期となります。「指定工場」になれば当社のテクニカルセンター(整備スペース)で事前整備から車検まで完了することができ、車検場に車両を持ち込む必要がなくなり車検にかかる時間を短縮できます。同じく2026年1月からは料金体制の見直しやコンプライアンスの確保を目的として「行政書士法」が改正されます。車検の書類作成や手続きの代行は行政書士が行なうことになるのですが、私は行政書士の資格を取得しておりますので、運輸支局(試験場)が休みの土日でも、書類や車検合格のステッカーを発行できます。
「指定工場」を目指しているのは、車検でお客様をお待たせする時間を短くしたいからです。「指定工場」として必要な機材は2月に揃う予定で、4月くらいから「指定」に必要な車検成績を満たしていき、2026年中に稼働を目指します。
今後の展開についても聞かせてください。
高野代表:店舗を増やすことよりもテクニカルセンターを大きくしたいと思います。当社のスタッフは現在7人ですが、10代~50代までの各年代2人を目安に、10人くらいで運営していきたい考えでいます。定期点検や車検整備はやることが決まっていて作業内容自体は難しくないのですが、その依頼台数が増えていますので、受け入れキャパシティも増やしたいと思います。そうなれば定期点検の整備待ちの時間を短縮でき、重整備が必要な修理や故障の原因追及といった時間のかかる作業にも、より充実して取り組めます。そうした重整備や“KH(2スト)”といった旧車は私が対応しているのですが、スタッフに点検からさらに踏み込んだ整備に関するアドバイスできるまで手が回っていないのが現状です。
そこをカバーするために重整備ができるスキルがあり、お客様が気付いていない不調となる“種(原因)”を見つけられ、若いスタッフにその技術を継承していけるメカニックを求めています。具体的には工場長や主任経験があり、「指定工場」になった際に新人教育ができるコミュニケーション力のある方を歓迎します。カワサキ以外のバイクに触れる機会もあり、ツーリングイベントでサポートを担当することもありますので、メーカーは問わずバイクが好きな方なら活躍できる場だと思っています。当社が他メーカーの修理に対応するのは、お客様にバイクを長く楽しんでもらいたいからです。そのためには、きちっとした状態のバイクに乗ってほしいのです。私も40年来の2ストスポーツを所有していますので、昔のバイクのよさも分かっています。そして購入してすぐに安心して乗れる新車の良さも分かっています。これからもバイクの色々な楽しさを提供していきたいと思っていますので、一緒に頑張っていきましょう。

工場長を務める山本さんは1987年生まれ。愛車のNinja ZX-25Rで「グリーンカップ」に参戦し、レースを楽しんでいる。
まずは入社された経緯を教えてください。
山本さん:父が乗っていたバイクが庭に長期保存されていたため、いつしかバイクをいじるのが好きになっていました。大学入学後にバイクに乗り始めて、できる範囲で整備もしていました。その後、大学を中退して茨城へ戻ってバイト生活をしていた時に、前身の『オートボーイRC』の正社員募集を見て入社しました。バイク関連に進むつもりはなかったのですが、『オートボーイRC』がドゥカティディーラーを経営していた頃に友人と来たことがあったのと、“バイクの販売整備”という求人内容に興味を持ったのがきっかけでした。
『オートボーイRC』時代は社長(高野代表)を含めスタッフは3人で、私は整備作業の補助をしつつ、お客様がいらしたら作業を中断して対応する感じでした。お客様と直に対応する機会が多かったのですが、自分の考えが及んでいなかったり、ミスをしてお叱りを受けたりとさまざまな経験を経て、お客様に喜んでいただくことを目標に考え方が変わりました。言われたことだけではなく自分から提案していけるように、たくさんのアドバイスを社長からいただいてきました。
現在の仕事内容は?
山本さん:カワサキ車の点検整備をしつつ、他メーカーの修理に対応しています。『オートボーイRC』時代にいろいろなバイクの知識と整備のコツを身につけ、資料も残っているので、そうしたノウハウを生かして働いています。また、点検後にはお客様と会話するのですが、整備のことだけでなくバイク談義や世間話を楽しむことも多いです。ショップツーリングでサポートとして同行したり、ガラスコーティングでキレイになったバイクを見て喜んでいるお客様の顔を見たりと、メカニックと言ってもお客様との距離が近く、楽しい仕事です。
テクニカルセンターの工場長としては、定期点検のスケジュールをしっかり管理し、作業が滞りなく進むようにしています。ただ、「指定工場」になると車検対応が増え、今の体制ではお客様をお待たせする時間も長くなってしまいます。私自身10年目ですが、まだまだ勉強することも多く、新人へのアドバイスも上手く伝えられていないと自覚しています。ですので、整備経験があり、コミュニケーションを取れる方が来てくれると助かります。

キャブレターを分解整備している山本さん。整備と接客をしつつ、新人教育と検査員の資格取得に向けて奮闘中。やりがいのある毎日を過ごしている。
応募を考えている人にメッセージをお願いします。
山本さん:給与に関しては、整備士資格分を考慮してもらい、仕事内容をしっかり評価していただいた上で、昇給やボーナスに反映していただいています。整備士資格取得補助、カワサキの資格取得補助、退職金制度もあります。休みは毎週水曜、第2・4・5火曜が定休で、残業はほぼありません。休みをしっかり取ることができ、あらかじめ伝えておけば土日に連休することも可能です。私も金・土・日と3連休にして、「グリーンカップ」に参戦していますから(笑)。
評価に透明性があるので、納得して働ける職場だと思います。カワサキプラザとして3年目を迎え、新車購入していただいたお客様の車検対応が増えていきます。お客様の喜ぶ顔を見るために、一緒に頑張っていきましょう!
写真はニンジャZX-25Rのワンメイクレース“Ninja Team Green Cup”で、山本工場長がクラス優勝した時のもの。仕事もプライベートも充実したバイクライフを送る。
2005年生まれで現在20歳の上野さん。流線形の顔が好きで1991年型ZZR400を愛車としている。ジョギングや山登りも趣味。
「JOBIKE」を見て入社されたそうですね
上野さん:そうなんです(笑)。高校卒業後に全国展開のバイク販売店でバイトしていたのですが、その時に「JOBIKE」で整備士募集広告を見たのがきっかけです。父がカワサキのバイクに乗っており、いじっているのを子どもの頃から見ているうちに、私も機械いじりが好きになっていました。整備士はやりたい仕事だったのと、カワサキ車のデザインのよさとライムグリーンに惹かれていたので、「カワサキプラザ水戸」は理想的な職場です。
実際に働いてみて、入社前と変わったことはありますか?
上野さん:入社前は、整備士の作業スケジュールは詰まっていると思っていました。実際は作業する時間を長めにとっていて、車体をきちんと見て、自分のペースでじっくり作業できています。
給与や待遇面はどうでしょうか?
上野さん:休みは充分にとれていますし、給与もしっかり評価していただいて満足しています。整備士資格取得もサポートしていただき、今後は2級整備士、検査員、ライディングアドバイザーといった資格も取得していく予定です。
では、どういう方に応募してほしいですか?
上野さん:カワサキ車の定期点検だけでなく、他メーカーのバイク修理や、コーティング作業、ショップツーリングでのサポートといった業務もあります。淡々と作業する人よりも、バイクが好きでこだわりを持っている人のほうが、やりがいも多く感じられると思います。
今の私は苦手な整備作業もありますが、先々は整備全般を教える立場になって、頼りとされるメカニックになるのが目標です。スタッフの年齢層は幅広いですが、世代を越えた会話も多く、そこでコミュニケーションがとれる人なら働きやすいと思います。
入社から1年半が経過した上野さん。作業に行き詰まった時には先輩からアドバイスをもらえ、「ストレスなく働いている」という。
JOBIKE編集部より
「カワサキプラザ水戸」は、カワサキディーラーながら修理やメンテナンスで困っている他ブランドのユーザー依頼にも応えている。正規ディーラーとしては珍しい対応だが、国産や輸入車メーカーのバイク販売や整備をしていた『オートボーイRC』時代に培ったノウハウを生かしており、「カワサキプラザ水戸」のショップの特徴にもなっていると感じた。また2026年にはオープンから3年となり、車検整備が多くなることも含め、「指定工場」化への準備を進めている。
こうした業務拡大に対応するためにメカニックを募集している。今回、高野代表の技術を継承し、それを次世代に伝えていってくれるメカニック経験者を優遇しているとのこと。お客様へのサービスをより充実させるための1年となり、多忙が予想されるが「好きなことを仕事にしても生活ができないのはダメ」という、高野代表の理念で待遇面はしっかりと設計されている。取材を通じて、やりがいを感じられる職場であると思った。
インタビューの最後に高野代表は、「鈴鹿8耐」にライダーやスタッフとして何度も参戦し、高いライディングスキルとレースに関する豊富な経験を持ち合わせているのにショップイベントで、サーキット走行会やライディングレッスンを行なわないのかと聞いてみた。「そうしたイベントを開催しても利益を得にくいというのが経営者としての判断ですが、サーキットでのスポーツライディングは趣味として楽しみたいという個人的な思いもあるんです」と言う。その回答を伺い、高野代表はスポーツライディング好きで、根っからの“バイク好き”な方なのだと感じた。この記事を見て、「バイク好き」スタッフが率いる職場に興味を感じてもらったら、ぜひ問い合わせて頂きたいと思う。
JOBIKE編集部より
カワサキプラザ水戸
〒310-0841
茨城県水戸市酒門町5119
電話:029-227-0103
営業時間: 9:30から18:30
定休日 : 水曜日・第2・4・5火曜日(月末の水曜日は営業)
HP : https://www.kawasaki-motors.com/ja-jp/plaza-store/mito
EMAIL : mito@kawasaki-plaza.net