取材協力:有限会社袖ヶ浦ホンダ 取材:村田奈緒子
掲載日:2026/04/17
千葉県に3拠点を構える『袖ヶ浦ホンダ』グループは、1965年創業の老舗バイクショップ。4メーカー(ホンダ/ヤマハ/スズキ/カワサキ)を取り扱う袖ヶ浦ホンダ本店と五井店、そしてホンダドリーム袖ヶ浦を展開する。3つの販売拠点のほかに4つのバックヤードを有し、在庫保有数の高さも相まって、地元だけでなく東京や埼玉、神奈川と商圏は広く、全国からお客様が訪れるお店だ。
これまで「働く環境を整える」という姿勢で具体的な改革に取り組んでいた同社だが、2026年にはさらに強固な組織力の構築に向けて大きく動き出そうとしている。
まずは袖ヶ浦ホンダ本店にて、代表取締役の小林宏子さんと、常務取締役の新川清太さんにインタビューを行った。ソデホンのこれまでの成り立ちや近年の取り組み、そしてさらに組織改革を行おうとしている理由と姿勢を伺った。
『ソデホン』について教えてください。
小林社長:四輪販売店として1965年に創業し、その後1972年の法人化のタイミングで袖ヶ浦ホンダ本店を設立、二輪の専業店となりました。1985年には五井店を立ち上げ、夫が立ち上げたこの会社を私が引き継いだのは2007年。そして2018年にはホンダドリーム袖ヶ浦をオープンしました。常時200台規模という在庫保有数の高さも相まって、地元だけでなく、東京や埼玉、神奈川と遠方からご来店いただくこともとても多く、おかげさまでメーカーから販売実績の表彰を受けるまでになりました。これもすべてスタッフの努力とお客様からの信頼のおかげです。
新川常務: 『ソデホン』は“圧倒的な在庫”を強みのひとつとし、お客様のバイク熱により良く応えられるように、スタッフの営業力育成にも力を入れてきました。その一方で、近年同じように取り組んできたのは “残業なし” の働き方です。時間になったらスタッフには「帰りなさい」と、最初は口をすっぱくして言ってきました。この改革を進めることで勤務時間は短くなりましたが、業績は成長。現在では会社全体に作業効率を意識した働き方が広がり、スタッフにも良い効果が生まれていると感じています。
働き方の効率化に成功したということですが、2026年はさらなる改革を考えていると伺いました。
小林社長:従業員こそ会社の未来です。働いている従業員が一生懸命になれることが最も重要だという思いで、試行錯誤をしながら時代に合った働き方を模索してきました。その一方で本店のスタッフの平均年齢は50代、スタッフの高齢化や若手がキャリアの先をイメージしづらいという課題がありました。
新川常務:2025年に新卒が2名入社し、若手も増えてきました。ここで抜本的に組織改革が必要だと考え、大きく3つの改革に取り組むことにしました。ひとつは評価制度の見直し、そして役職の増設と明確な組織の階層化です。
弊社はこれまで絶対評価制度でしたが、見えづらい個々の成長や長所にもフォーカスすべく360度評価を採用。役職も増設し、組織の階層化を明確にします。これによって例えば階層ごとのミーティングを実施しスタッフの自覚を芽生えさせることを目指したり、組織の一員として業績や数字に興味関心をもってもらことで仕事をすることの視座を数段アップしてもらいたいという狙いもあります。
話は少し変わりますが、本店内はレイアウトも少し変わりましたね。
新川常務:よく気がつきましたね。どうしても同じメンバーで同じ場所で働いているとルーティン化してしまうこともあるので、新しい風を取り込む施策としてレイアウトを変更してみました。これまで店内のレイアウトに関しても、パートの方の意見を取り入れて変更したこともあります。これがベスト!というわけではなく賛否はありますが、変化の積み重ねが組織の進歩には必要だと思います。その進歩に、社員もパートの垣根もないのが『ソデホン』の良さでもあると考えています。
小林社長:仕事というのはお給料をもらうためだけではないと考えています。人生を会社とともに過ごしてもらうことは、スタッフ一人ひとりの人生設計に会社が関わることを意味します。従業員に長く勤めたいと思ってもらうためにも、閉塞感がなく未来を描きやすい舞台を整えることが、『ソデホン』の次のステップにとても大きな意味をなすと考えています。
『ソデホン』のスタッフは、私から見ても一人ひとりがお客様に対して本当に真摯だと思います。気の遣い過ぎに対して心配になることもあるほどですが、そのおかげで弊社のスタッフの仕事ぶりに関してお客様から良いお言葉をいただく機会がとても多いんです。私はそれが本当に嬉しいし、この商売を続けてきて良かったとしみじみ思います。だからこそ、スタッフが長く勤めたい、ここでさらに頑張りたいと思える組織体制をつくっていきたいと考えています。
新しいスタッフに求めることはありますか?
小林社長:『ソデホン』は、学歴や経歴はまったく気にしません。元気で素直に、お客様ときちんと向き合ってその声に真摯に応える。そして、働くことで自分自身の人生にもしっかりと向き合って前に進んでいきたいと思う方とご縁があると嬉しいですね。

本店での集合写真。親子で常連だという方や常連客のお子様がバイトとして勤務していたりと、接客の良さから多くのファンを抱えている。

2025年9月にソデホンに復職した笹谷侑平さん(27歳)。いちど他社を経験したからこそ見えるソデホンの良さについて語ってくれた。
本店からクルマで30分ほど離れた市原市にある袖ヶ浦ホンダ五井店。ここからは袖ヶ浦ホンダ五井店に在籍するスタッフ、笹谷さんのお話を紹介する。
最初のご入社の経緯を教えてください
笹谷さん:大学は福祉関係の学部で、いずれは福祉関係の仕事に就くことを視野に入れていました。大学生の頃にバイクにハマったことがきっかけで二輪関係の仕事がしたいと思うようになり、挑戦するつもりで応募しました。良いご縁をいただき、大学を卒業後、2022年にソデホンに入社しました。整備士資格がなくても応募することができた点も、挑戦の後押しとなりました。
そこからいちど、ソデホンをお辞めになった経緯について教えてください
笹谷さん:約2年勤めた後に、他社で異業種を経験してみたいという興味が芽生え、保険関係の会社に転職しました。社会人として他の会社も知っておきたかったという思いから、保険関係の会社を2社ほど経験しました。転職した保険関係の仕事は学びもありましたが、お客様からダイレクトに「ありがとう」と言ってもらえていたソデホンでの働き方に未練が無かったわけではありませんでした。
ソデホンに戻られた経緯や、ブランクを経て感じた変化はありますか?
笹谷さん:実は、ソデホンを退職した後も新川常務とは連絡を取り合っていて、当時のように飲みに連れて行っていただくこともありました。そこで仕事の悩み相談もしたり、退職後のソデホンの変化なども教えていただいていました。退職後も繋がりが切れることなく、僕のことを気にかけていてくださったのですが、ソデホンに未練もある僕の雰囲気を感じてか、新川常務から戻ってこないかとお声掛けいただいたのが復職のきっかけでした。当時から良いイメージしかなかったので、誘っていただいたことは素直に嬉しかったです。社長にもご挨拶に行き、「2度目はないぞ!」と激励していただき、復職することとなりました。
ブランク期間にも社内のことは耳にしていたので、ある程度のことは知ってはいたのですが、1年半前に離職した当時より年間休日が増えていて、纏まった有休を取ることのハードルが低くなっていることは驚きでした。そもそも五井店は営業時間そのものが短くなりましたし、閉店後も残業しているとむしろ注意されるくらいです(笑)。プライベートも大切にしながら、より効率的に業務をこなすという考え方が急速に定着していて、 “家庭を築く基盤としての仕事” としても、かなり安心感のある環境に変わっていました。
笹谷さんご自身のキャリアプランや人生設計において、考え方に変化はありましたか?
笹谷さん:他社を経験したことでソデホンに対する認識も変わりました。先日、急な休みをいただいたのですが、その際の会社側の対応や他の従業員のサポート(助け合い)の姿勢から、柔軟な働き方に進歩している印象を持ちました。ブランクを経て復職しているため余計に強く感じられたのかもしれません。今後、結婚したり子どもが生まれたりしても、この会社なら安心して働けると感じています。
再就職したいまは具体的に目指す役職も定まり、そこに向かってひとつひとつ積み重ねていく意識を持つようになりました。また、そのためにすべきことや必要なことをより考えるようにもなり、会社の変革スピードに僕自身もしっかりついていきたいと思っています。

アルバイトでの勤務を経て、2025年春にソデホンに入社された鎌田大和さん(22歳)。すぐに相談できる環境が整っていることがソデホンの魅力だと語る。
続いては、アルバイト勤務から正社員として入社された鎌田さんにお話を紹介しよう。
まずは入社までの経緯を教えてください。
鎌田さん:日本自動車大学校の袖ヶ浦キャンパスで学生をしていた時代に、学校のアルバイト求人でソデホンを見つけ、アルバイトからスタートしました。2年ほどアルバイトした後、就職活動を考えるタイミングで社長から「社員にならないか」と声をかけていただき、正社員として入社させていただきました。社長から直接声をかけてくれたことが素直に嬉しかったですし、アルバイト時代に企業としての魅力も感じていたので、入社を即決しました。
正社員になったことで、変化はありますか?
鎌田さん:アルバイトのときは指示を待つ姿勢でしたが、社員になったいまは自分で考えて行動することを強く意識しています。また、ソデホンは社長や常務、そして先輩社員がすぐ近くにいてくれる(物理的にも心理的にも)ため、報告・連絡・相談 がしやすい環境です。自分ひとりで抱え込まず、しっかりコミュニケーションを取りながら仕事に向き合うことができる、困った時にはすぐに相談できる環境が整っていることは、ソデホンの大きな魅力だと思っています。社長は僕の働きぶりを伝えるために実家に電話してくださることもあって、最初は両親もびっくりしていましたが、僕自身もこうした心遣いがありがたいと感じるようになりました。
五井店は新規のお客様も多い店舗です。お客様とも多様なコミュニケーションが必要になりますが、働くうえで自分自身の課題だなと思っているのは、接客時の言葉遣いです。お客様に対してややカジュアルな言い方になってしまったり、自分自身では気付いていなことを指導してもらうこともあるので、少しずつ学んでいきたいと思っています。僕自身は整備士希望で入りましたが、いまでは営業もできるに越したことはないと、整備と接客の両方を極めるために奮闘する日々ですね。

企業説明会でソデホンにひとめ惚れし、2025年に入社した小川星大さん(23歳)。
鎌田さんと同じく、2025年の春に新卒で入社した小川星大さんにも話を伺った。
ソデホンへの入社を志したのは、いつですか?
小川さん:1年生の頃です。もともとバイク業界への就職を志して日本自動車大学校に入学し、在学中に企業説明会でソデホンに話を聞いたときに、「ここで働きたい!」と強く感じました。地元の大きな有名店としての評判も知っていたのですが、企業説明会で熱意あるお話を聞いて、「ここしかないな」と。
学校へは2級自動車整備科に2年、自動車車体整備科で1年と計3年在籍しました。在学中は少しでも入社選考を有利にすべく、保有資格は多いに越したことはないという考えのもと、資格取得にも積極的に取り組みました。
第一希望の会社に就職した感想や、現在の職務について教えてください
小川さん:入社当初は整備志望の気持ちが強かったですが、いまでは営業も学べる環境にとても満足しています。整備は幅広い知識を学んで実践を積み重ねたりと自分自身に向き合うことが多い職種ですが、その学びや知識をお客様に伝えるという側面もある営業もおもしろいんですよね。お客様に名前を呼んでいただいてお問い合わせをいただいたり、顔馴染みの方が少しずつ増えているのもとても嬉しいです。
ソデホンは頼りになる先輩が多く、工場長や店長ともコミュニケーションが取りやすいのが特徴です。分からないことはすぐ聞くことができ、経験と知識を積み重ねることができるのが僕自身の喜びでもあります。ソデホンでは4メーカー(ホンダ/ヤマハ/スズキ/カワサキ)を取り扱っているので覚えることは多いですが、いつか「小川さんから買えてよかった」とお客様から頼りにされる存在になれるよう、営業と整備の両立を頑張りたいです。

五井店での集合写真。明るくエネルギッシュなメンバーがお客様の笑顔を生み出している。
ホンダドリーム袖ヶ浦のオープンに合わせて入社した山田篤志さん。現在は店長を務め、6名のスタッフとホンダドリーム袖ヶ浦を切り盛りしている。
ご入社の経緯や、お店の特徴を教えてください。
山田店長:前々職はバイク関係でしたが、前職は飲食関係で、当時は休みが月に2日ほどという過酷な職場でした。ソデホンに入社したきっかけは、前々職の上司だった新川常務に声をかけてもらったことでした。その後、ホンダドリーム袖ヶ浦のオープンに伴い店長に就任、現在に至ります。
ソデホンの凄いところは、なんといっても在庫数です。潤沢な在庫があるから、お客様に臆することなく提案でき、それが結果として喜ばれるという好循環を生み出しています。ドリーム袖ケ浦においても戦略は一貫していて、豊富な在庫を求めて遠方からもお客さんがいらっしゃいます。
ご入社後に、働き方の変化はありましたか?
山田店長:昨今の残業なしの取り組みは僕にとっても新鮮でした。最初はたかが1時間早く帰れたところで…と思っていたのですが、その1時間があることで家族と夕飯を食べることもでき、趣味の時間を設ける気力も残っていたりと、自分時間を持つことで気分転換し、翌日も仕事頑張ろう!という気持ちを持てるので、とても良い取り組みだと感じています。
その反面、日々の仕事においては時間内に終わらせるための段取りや、スタッフ間の協力が欠かせません。他の一般的な企業と同様にソデホンにも役職はありますが、上司と部下という言葉から連想される序列の感じがあまりないので、チームとしての団結力があり、仕事はやりやすいと思います。
入社を検討している方に、メッセージをお願いします。
山田店長:ソデホングループは、いい意味で上司と部下の関係が厳しくない環境だと思います。お互いにリスペクトしながら仕事に打ち込むことができ、いちから知識と経験を習得できる職場だと思います。
また、ホンダドリームは全車種を取り扱う専門店なので、ホンダの知識に集中できるという良さもあります。
私は前々職では営業として勤めており、整備の経験が無かったのですが、ソデホンに入社後に整備についてもじっくり勉強でき、結果的に営業力も向上してきたと感じています。既にメカや営業の経験がある方はもちろん、未経験の方が成長できる環境も整っていますので、ぜひ応募してほしいですね。

ホンダドリーム袖ヶ浦での集合写真。ドリーム店ならではの接客対応力と “ソデホン” としての在庫力が武器。
JOBIKE編集部より
前回取材した時に、個人的にとても印象に残っていることが2つあった。一つは、「もし仮にスタッフが退職して他の会社にお勤めすることになったとしても『さすがソデホンに勤めていたことはある!』と言っていただけるような社会人になってほしいと願うし、そうやって言っていただけるスタッフを育成するのが雇用する私たちの義務だと思います」と、小林代表と新川常務は語っていたこと。そして、小林代表が従業員の実家にもコンタクトして、彼らの働きぶりや評価、そして日々尽力してくれていることへの感謝を伝えていることだった。
今回お話を伺って感じたのは、具体的な環境ややりがい、待遇などを改める企業としての姿勢だった。持続可能な事業成長を可能にすべく、より戦略的に「選ばれる会社」づくりに着手したことを意味する。こうした組織改革は理想としてもなかなか実行に移すことができない企業も多いなか、この老舗企業の大きな変化はバイク業界での働き方の成功事例として新鮮な風をもたらすのではないかと期待と好奇心を感じた気持ちの良い取材だった。
JOBIKE編集部より