取材協力:株式会社R41 YSP名古屋北 取材:沼尾宏明
掲載日:2024/10/03
愛知県名古屋市から北に延びる国道41号線に店舗を構える「YSP名古屋北」は、中部地区最大クラスの店舗面積を誇る有力ショップ。お客様であるライダーと共に鈴鹿8耐へ参戦するなどユニークなレース活動でも有名だ。名古屋市内に展開するグループ店「YSP天白」と合わせて、サービスマンとセールスを募集する。
現代表である小島さんの父が「YSP名古屋北」を創業したのは1991年。趣味のバイク熱が高じて、ショップを開設したのが始まりだ。その後、急成長を遂げ、全国各地のYSPで構成されるYSPメンバーズクラブの会長を務めた。
一時期、BMWとの併売店である「プロテック名古屋北」に屋号を変えたものの、2019年から再びYSP名古屋北としてスタートしている。ヤマハスポーツバイク専門店のトップチャネルであるYSPとして高い技術力とサービスを誇り、お客様からの支持は厚い。その一方、3年連続で鈴鹿8耐に参戦するなどレース活動が盛んなのも特徴だ。
そんな同店を運営するのが小島恵美さんだ。前職は異業種で活躍してきたが、2016年から家業を継いで代表に就任。インタビューから、様々な経験と広い視野が経営に活かされていることがわかった。
YSP名古屋北とYSP天白を運営している小島恵美さんは、この業界では珍しい女性社長。柔和かつ快活な方で、三児の母としても奮闘してきた。
YSP名古屋北を現在の店舗にリニューアルしたのは2021年です。当時の店舗面積はYSPとして日本最大級で、現在も中部最大クラスです。
鈴鹿など近隣のサーキットに足を運ぶ機会も多く、8耐レーサーなどなかなか触れられないマシンに触れる貴重なチャンスがあるのが当店の特色です。
実際、お客様が鈴鹿8耐に出場しており、YSP名古屋北がサポートしています。3年連続で完走しており、今年は「TeamマツナガKDC & YSP名古屋北 with RPT長野」として参戦。入社2か月で8耐にメカニックとして参加したスタッフもおります。もちろんレース活動については参加希望制なので、レースに関心がない方でも大丈夫です。
技術力が高いのも当店の強みです。ヤマハ独自の整備士教育プログラム「YTA(ヤマハ・テクニカル・アカデミー)」で最高位のゴールドをはじめ、シルバー、ブロンズといった資格保有者が在籍し、20年勤めるベテランも多いです。
お客様への説明に写真を交えたり、伝票を見ながら詳しく説明したりできるので、納得感も違います。とはいえ技術だけではなく、「ここで買って、この人に任せておけば安心だね」と思っていただくためには人と人の触れ合いが大切だと考えています。
私は以前、一般企業に勤めており、休日には司会やナレーターの仕事をしていましたので、バイクにはほぼ興味がありませんでした。免許は取得していましたし、今はバイクも好きですが、バイクについて熱く語れるタイプではありません。しかし、スタッフが働きやすい環境は整備できると常々考えています。
今の二輪販売店は、若い方になかなか来ていただきにくい業界になっています。そこで私が代表になった時、自分には何が出来るのだろうと考えをめぐらせて、「社員が一生幸せに暮らせる会社を創りたい」という社是を定めました。
企業の目的は働いてくれている人を幸せにすること、社員の幸せを通して社会に貢献すること。目標の売上や、利益、会社の成長はあくまで手段であり、目的ではありません。
ともに働くスタッフは、一緒にいる時間が非常に長いですから、ギスギスした環境で仕事するより、相手を思いやって気持ちよく働きたいですよね。そうすると自然に利益もついてくると思うのです。その利益をみんなで分け合うイメージが私の理想としている形です。
世間のバイク屋さんは、カリスマ的な名物店長さんが引っ張っていくイメージがありますが、私は社員と一緒に「みんな頑張って働くよ」というタイプでいきたいと考えています。
今後は、まず休日を増やしたいと考えています。現在は週休2日のシフト制で残業がほとんどなく、休日出勤もありません。事前に申請すれば土日にも有休が取得できるので、ご家族がいる方も安心して働けます。
その一方で昔ながらのバイク屋さんらしく定休日が月曜日のみとなっております。2025年1月からは隔週で火曜日も定休日とし、少しずつ休みを増やしていきたいと考えております。
また、社内教育や研修も大事にしたい。こちらも昔ながらのバイク屋さんがあまり熱心ではなかった部分ですが、少子高齢化が進む中、業界全体が意識を変えないと生き残っていくのは難しいと考えています。スタッフが一般常識や基礎を学ぶことでスキルアップして、お店全体のレベルを上げていきたいです。
今回募集するのはサービスマン(メカニック)とセールス(営業)です。資格や経験がある方はもちろん歓迎ですが、私が面接で最も重視するのは「バイクが好き」という情熱ですね。
正規販売店のスタッフとして知識は必要ですが、バイクが好きでバイクを楽しめていなければ、長く仕事を続けることは難しいですし、お客様にバイクの楽しさを伝えられません。未経験の方でも「バイクが好き」という熱意を持って、成長してもらいたいと思います。
最近JOBIKEさんを通じてサービスマンとして採用させていただいた58歳の方も未経験でした。35年間、教員をされていて、免許を取って数年の方でしたが、既に職場に溶け込んでいます。私自身も経験が浅いんですけど、バイクが好きな気持ちや「みんなでやってこう」という気持ちがあれば、できることって何かあると思うんですよね。
興味があるなら、まずはためらわずに飛び込んできてほしい、チャレンジして欲しいです。例え未経験でも、整備士の資格取得など可能な限りサポートしていきます。
YSP名古屋北では「全社員で取り組む5つの行動指針」を定めている。「うそをつかない」「笑顔を忘れない」「約束・会社のルールを守る」「モノを大切にし、つねに感謝の気持ちをもつ」「原理・原則を知る」で構成されている。
こうした指針は大企業でよく見られるが、個人経営のバイク販売店で、ここまでしっかりした指針を掲げている企業は少ない。さらに、社長が仰るとおり「社員が一生幸せに暮らせる会社を創りたい」というモットーを掲げている。ここまで社員思いの目標を明文化している企業となるとさらに珍しい。異業種を経験してきた小島代表ならではのフラットな目線が活かされていると思う。
そして小島代表は何より謙虚。スタッフの目線に立ち、働きやすさを実現しようと尽力してくれていることが伝わったはずだ。
TeamマツナガKDCのチームオーナーである松永修さん。YSP名古屋北とタッグを組み、8耐などに参戦している。2024年の鈴鹿8耐はケガで出走できなかったが、トップカテゴリーのEWCクラスに初参戦し、見事完走! 写真はお店に入庫していたノーマルのYZF-R1とのカットだ。
2024年の鈴鹿8耐に「TeamマツナガKDC & YSP名古屋北 with RPT長野」から参戦した松永修さんにもお話を伺った。
YSP名古屋北は、鈴鹿サーキットまで1時間半~2時間程度の距離にあり、鈴鹿を走るライダーも多く利用している。松永さんも、そんなお客さんの一人で、自営業を営みながらレースを満喫している57歳だ。
2018年の鈴鹿サーキット・ナショナルJSBクラスや2019年の同ST600クラスでは年間チャンピオンを獲得。2022年から鈴鹿8耐に参戦開始し、3年連続で完走を果たしている。
若い頃にレースをしていましたが、30年ほどのブランクを経て、2015年からサーキット通いを再開しました。YSP名古屋北とは前代表からの付き合いで、お客さんは私のような50代の方が多いですね。
YSP名古屋北のスタッフはやる気もあって、とても感謝しています。しかもオーバーホールしてもらったレース用エンジンはとにかく壊れない。整備する人によっては2000kmでブローする場合もあると聞きますが、1万2000km走っても大丈夫でした。小島さんによると、特別なことをしているわけではなく、基本に忠実に丁寧に整備しているだけとのことですが、素晴らしいです。
レースをするには何かとお金がかかりますし、経験を積むことも必要。若い方は、ショップで働きながらレースに参戦するのがおすすめです。もし新しい人材がレースに携わりたいなら、ライダーとしてもメカニックとしても、どんどん参加していただきます。もちろん育成もします。ぜひ若い人にレースに興味を持ってもらいたいですね。
角さんは、入社半年の20代メカニック。異業種から未経験で入社し、わずか4か月で8耐にメカニックとして参加したという貴重な経験を持つ。普段の業務では、わからないことをすぐ先輩に聞ける体制のため、日々できることが増え、やりがいを感じていると語ってくれた。
角さんは、2024年3月末に入社した関西出身の29歳。社長によると、面接で情熱を感じ、「メカニックの後輩を育ててもらえる人になれると期待しています」とのことだった。
家族がバイクに乗っていたので、いつかは乗りたいと思っていましたが、実際に免許を取ったのは2年前、27歳の時でした。
そこからYZF-R25に乗り始めて、「もうこれしかない」という感じに(笑)。当時は、九州で建設関係の仕事に携わっていたのですが、ヤマハの販売店に勤めたいと思うようになりました。
レースには以前から興味があり、調べていくうちにYSP名古屋北を知りました。数あるYSPの中でも特に8耐で目立っていたので、さっそく求人に応募してみたんです。
本当にただのバイク好きだったので、面接では大丈夫なのか不安でした。ただ、やりたいという気持ちを全面に出しましたね。
半年働いてみて、本当に働きやすい職場だと実感しています。ベテランメカニックの先輩が親身になって、未経験の私をサポートしてくれます。それこそボルトの締め方からマンツーマンでついてくれて、常に確認が取れる体制で仕事を進めています。
入社前は、車両の整備をできるのはずっと先だろうなと思っていたのですが、先輩が一緒になって、想像以上にどんどんやらせてもらえる環境でした。それはすごく嬉しいですし、安心ですね。
半年で出来ることも増えてきました。初めてやる整備やカスタムなど、自分の成長を感じる瞬間が頻繁にあるので、とてもやりがいがあります。
当面の目標は、YTAのシルバークラスを目指すことです。YSPの規程ではシルバーが複数在籍する必要があるので、お店のためにもなると考えています。
未経験の場合、やっぱり覚えることが本当に多いですし、わからないことばかりです。最初はちょっとしんどいと思っていたのですが、仕事がある程度こなせるようになってから比較的楽になってきたと思います。YSP名古屋北は未経験でも指導してもらえる体制が整っています。
「自分のバイクも同じですけど、お客様のバイクを丁寧に扱い、預かる前より綺麗にすることを心掛けている」と話す角さん。休日はスタッフとバイクで遊んだりしているという。
営業を担当する鈴木宏昇さんは61歳の大ベテラン。16歳からバイクに乗り始め、最近はXSR125で毎日10kmの通勤を楽しんでいる。
営業を担当する鈴木さんは、前掲の角さんとは対照的に長いキャリアを持つベテランスタッフ。61歳の現在まで大部分をバイクのセールスに携わってきた。YSP名古屋北に勤務した後、他の販売店を経て、再びYSP名古屋北に戻ってきた経歴から、同店の居心地のよさや働きやすさが見えてくる。
YSP名古屋北には、30代から10年以上お世話になりました。それから他店に転職して定年を迎え、2023年1月からYSP名古屋北に戻ってきました。社長もお客様も知った方が多いので、非常に仕事しやすいです。
YSP名古屋北は、全国のYSPの中でも大きい店舗ですし、バイクもたくさん置いてあるのがポイントです。そして、いい意味でディーラーとモータースの“いいとこ取り”かなと思っています。正規ディーラーさんはちょっと硬いんですよ、 色々と。一方、個人経営のモータースさんは業務などに曖昧な部分も多いです。YSP名古屋北はその真ん中ぐらいのほど良い雰囲気がいいと思っています。
職場は、やりたいことがあれば、どんどん提案できます。採用されるかは別ですけども(笑)。前代表や社長と話しやすい職場です。
普段の業務では、なるべくお客様一人ひとりに合った対応を心掛けています。どのセールスでも一緒ですけど、年齢や性格などに応じた接客をしています。中でもお客様が何を目的にバイクを欲しがっているのかを大事にしています。
購入後、初回点検などで来ていただいた時に「鈴木さんからこのバイク買ってよかったです」なんて言われた時に最もやりがいを感じますね。
応募を考えている方へのメッセージとしては、営業の経験がなくても、やっぱりバイクへの興味がある方に来て欲しいですね。メカに関する知識もあるに越したことはないですけど、なくても心配ないです。お客様に説明する際、私もわからないことがあるので、ネットなどで仕入れた生半可な知識ではなく、サービスマンに聞いて正確な情報を伝えるようにしています。
なお、営業マンにはある程度の個性は必要ですけど、強すぎてもいけません。スタッフへの調和と自分の意見を伝えるバランスが大事です。
お客様に応じた接客を心掛けている。「鈴木さんからこのバイク買ってよかったです」と言われた時にやりがいを感じるという。
JOBIKE編集部より
志を高く持ち、「社員が一生幸せに暮らせる会社創りたい」と言い切ってくれる企業はそうそうない。「理想論」と思う人もおいでかもしれないが、目指す姿があるのとないのとでは、実現の可能性に雲泥の差がある
誤解を恐れずに言えば、バイク販売店は良くも悪くも「昭和」を思わせる昔ながらの業態が多い。そんな中、YSP名古屋北では、社員を重視し、少しでも働きやすい職場環境を目指して改善を続けていることが伝わってきた。
さらに、人の和を重視し、社長が目配りをして新人を職場に溶け込めるよう配慮してくれるというから、未経験や異業種の人でも安心して働けるはずだ。
これらの姿勢は、やはり小島代表が異業種から転職し、いい意味で二輪業界と一線を画す目線を持っているからこそだろう。
そして、未経験の方でも優遇してくれることから、在籍するスタッフはキャリアも年齢層も幅広い。多様性が必要なこの時代、他のバイクショップでは見られないユニークかつ多様な人材が多数在籍しているのは大きな強みに違いない。働きやすく、しかも楽しそうな職場。これが取材した率直な印象だ。少しでも興味を持ったら、門を叩いてみてはいかだろう。
JOBIKE編集部より
株式会社R41 YSP名古屋北
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