法人向け車両の販売&メンテナンスが事業の柱、異色のバイクショップ『T-REX』

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「整備士」という貴重な職業をリスペクトし、新たな二輪ビジネスを開拓するユニークな企業

取材協力:T-REX  取材:沼尾 宏明

掲載日:2023/09/20

ビジネスバイクの販売・メンテナンスやリース事業で知られるT-REX(ティーレックス)。東京都調布市に本拠を置き、近県にまで商圏を広げている。一般的な意味での「バイクショップ≒車両販売店」という概念に縛られず、オートバイによる新たなビジネスチャンスを窺い、今や貴重な「整備士」という職業に対する待遇改善についても意欲的。実に独自性のある企業だ。今後さらに事業を拡大すべく、メカニックを募る。



ティーレックス株式会社 
坂尾 圭 代表取締役インタビュー

現状に満足していない
整備士の方に来て欲しい

  • T-REXの本社は甲州街道沿いに立地。店内には多数のジャイロキャノピーやジャイロXの新車&中古車がストックされていた。

  • 過去にはスズキの新車販売数で東日本2位を記録した実績があり、メーカーから受け取った多くの表彰状が飾られている。2013年頃から現在のビジネスバイク事業に注力し、業績は絶好調だ。


―――「ウチはバイク屋だけど、バイク屋ではないのです」と話すのは、T-REX代表取締役社長の坂尾圭さんだ。話を伺っているうちに、その意味がわかってきた。
坂尾社長は異業種の出身で、2000年から中古バイクのインターネット販売に携わってきた。
2006年に法人化し、T-REXを創業。当初は中古車販売店だったが、新車販売店への変遷を経て、現在ではBtoBの法人向けビジネスバイク事業へと舵を切り、業績は非常に好調だ。

深刻な問題である「整備士不足」は
バイク業界が自ら招いた結果

坂尾社長:”整備士”は、今や非常に貴重な職業であるにも関わらず、その立場や待遇は今一つ、というのが現状ではないでしょうか。私はバイク業界を挙げて、その価値に見合うだけのビジネスモデルを構築していく必要があると常々考えています。

まずは整備士を取り巻く状況を整理してみましょう。
今、整備士は四輪業界を含めて慢性的に人手不足ですが、二輪の整備士の不足はより深刻な状況です。しかし、これはバイク業界が自ら招いた結果だと考えています。

個人的な分析では様々な理由があります。
まず第一に、雇用形態が不完全です。私が二輪業界に入った2000年代から、大部分のバイク販売店が社会保険に加入していませんでした。大手バイクショップの中にも労働時間は長く、低賃金であるという、いわゆるブラックな企業があり、せっかくバイク業界に入ってきてくれた整備士を使い捨ててしまっているという印象があります。
もちろん、これでは人生設計を描くことも難しいです。

バイク好きの若い方が整備士として二輪販売店に入社したはいいけれど、先輩の整備士を見た時に「自分が結婚して子供を高校、大学に進学させる」という将来像を描けないのではないかな、と思います。若い頃は「バイクが好き」という情熱だけで何とかなるかもしれませんが、結局後々転職をされる方が非常に多いです。
そのため、20~30代の若い整備士は少なく、全体的に高齢化しているのが現状です。

整備士の不足から来る当然の帰結と、
対抗策

現在、日本国内に保有されている二輪の車両台数は1,000万台程度、国内4メーカーにおける新車の国内向け出荷台数が年間30万台程度です。この車両の台数をベースとした数字に対して、「オイル交換で1か月待ち」といった、整備士不足が大きな問題として表面化している販売店が数多く見受けられます。

日本の人口の減少に伴って、今後バイクの保有台数や新車の出荷台数は将来的に大きく減少していくことが予想されますが、それでも整備士の仕事は絶対になくならないはずです。
つまり、整備士を務めている人々は非常に貴重な人材であり、今後数十年にわたってその価値に見合うだけのビジネスモデルをバイク業界は作り出して行かなくてはならないと痛感しています。

当社では法人向けのビジネスバイク事業をはじめ、様々な事業を展開していきます。そのために、整備士の皆さんがしっかりと将来を描けるような待遇を受けられて、環境面でも働きやすい職場の構築を実現したいと考えています。
その理念に基づき、すでに当社T-REXでは世間の平均以上の年収と、ほぼ残業時間ゼロを実現しています。入社4年目の二級整備士の場合、年収は500万円以上。資格手当、住宅手当、自動車手当といった各手当も充実しています。また、社員から待遇や環境についての改善アイデアがあった場合、可能な限り実現させるよう努めています。

他の一般的な車両販売店に比較してこうした待遇を実現できるのは、当社にビジネスバイクの事業という大きな柱があることが理由です。これはトレンドや景気の情勢によって大きく業績が変動しがちな、趣味性の高い車両を扱う事業に対して、先行きの安定した手堅いビジネスモデルであると言えます。

人がいる限り「移動体の整備」という仕事は絶対になくならない

二輪販売店は、1980年代のバイクブーム当時からの旧態依然としたビジネスモデルをそのまま継続している場合が多いです。
しかし、これほど情報技術が発展し変化の早い現代においては、極端なことを言えば今やビジネスモデルというものは一週間単位でも修正が必要です。1年後、3年後、10年後の未来を予測しながら、日頃から常に将来を見据えたビジネスモデルのアップデートを実施していかなければ、世間の変化の早さに対応できないと考えています。

例えば当社では、今後の世界の変化への対処方針として、ガソリンエンジンのバイクと、電動バイクの両方を取り扱っており、今後世の中がガソリンと電気のどちらへ転んだとしても追従・対応できる事業体制を構築しています。
また、愛知県名古屋市を皮切りに、現在提供しているサービスを全国各地へ規模を広げて展開することも計画しています。
他にも新規のビジネスの仕込みを行っていたりと、常に変化へ対応できる体制作りには余念がありません。

さらに言えば、当社T-REXは「移動体を整備することによって社会貢献する会社」です。
移動体とはバイクだけではなく、車でも、ロケットでもいいのです。
こうした、人間が利用する「機械」には、必ずメンテナンスや修理が伴います。そのため、当社はバイク屋というよりも設備のメンテナンス会社に近いかもしれません。

そういう意味で、ウチは"一般的なバイク屋”とは言えないのです(笑)。
だからぜひ「柔軟な思考ができる人」に来てほしい。もちろん一般常識は必要ですが、「バイクや販売店はこうなんです」というバイク業界の常識に縛られない人が希望です。

整備に関する資格はあった方が望ましいですが、未経験の方も歓迎します。仕事の進め方をまとめたマニュアルが整備されていますし、資格取得のサポート体制も整えてあります。
資格取得に関する講習に行く際は有給扱いとさせていただき、一発で合格できれば授業料の個人負担も全額免除としています。

バイクや車のメンテナンス&修理は、いくらAIが発達したとしても人工知能に完全に取って代わられるということはない貴重な仕事です。現状に満足できていない整備士の方、新たに整備士という職業に魅力を感じた方はぜひT-REXまで応募してみて下さい。

世間の平均を上回る年収と働きやすい環境、整備士にとって理想的な職場

  • スズキの正規取扱店として一般ユーザー向けの原付スクーターを販売するほか、個人のバイクの整備&点検も受け付けている。

  • 敷地内には納車を待つ新車のジャイロキャノピーが多数並んでいた。

  • T-REXは認証工場。敷地内にエアコン付きのサービス工場を設置している。

  • 最も利用頻度の高いジャイロ系のタイヤや純正部品は豊富に在庫。契約した膨大な車両の保守点検、修理に迅速に対応している。

  • 広々とした事務室。依頼された企業の用途や予算に応じて最適な整備プランを設計し、整備士のスケジュールも管理している。2023年8月現在10名のスタッフが在籍。


―――坂尾社長の話にあったとおり、T-REXは独自性のあるバイク店だ。一般ユーザー向けのバイク販売、整備&修理、車検などの業務も行っているが、ビジネスバイク関連が事業の柱となっている。

ホンダのジャイロキャノピー、ジャイロXといったビジネスバイクの新車&中古車販売が大きな柱。そして法人企業向けの「働くバイクの保守業務」がもう一つの柱だ。

法人にバイクを納品することで、その後の定期メンテナンスの仕事も引き受けることとなり、顧客と密接かつ長い関係を構築。定期的なメンテナンスを行うほか、急な故障などにも対応している。商圏は広く、東京・埼玉・千葉・横浜・川崎地区と関東圏の主要エリアをカバー。前述のとおり、全国的なサービス展開も検討中でさらなる発展が期待できる。

当然メンテナンスのサイクルは、契約のある法人の業種や使用状況によって異なる。そのため、依頼された企業の用途や予算に応じて最適な整備プランの設計、提案まで行う。
T-REXでは独自開発したデータベースに基づく「バイクケアマネージメントサービス」を用意。クライアントの運用状況を把握し、適正な台数、最適なメンテナンススケジュールの作成といったトータルサポートで、依頼主のビジネスを成功させるためのパートナーを標榜している。

こうした業務用メンテンスや修理は出先で行うのが基本。一般的なバイク販売店とは異なるスタイルながら、扱う車種がほぼビジネスバイクで固定されているので整備が覚えやすい。
また、一人で作業ができるまで先輩スタッフがついてしっかりサポートしてくれる上に、マニュアルが用意されるので不安は少ない。

スタッフの中には、バイク整備の経験がない状態で入社し、短期間で整備士の資格を得た方も在籍している。段階を踏んだ社内研修があるほか、資格講習の費用補助などサポートが手厚いのも魅力的。着実にキャリアアップできる環境が整っている。

そして、給与は一般的な整備士の収入を上回り、世間の一般平均以上。昇給、年二回の賞与、各種手当が用意されている。高給だと過酷な労働環境を思い浮かべる人も多いだろうが、残業がほぼなく実働8時間を実践し、スタッフは概ね定時で退勤している。
休暇は毎週日曜と隔週土曜。イベントが多い土日をしっかり休めるバイクショップは稀だ。


スタッフインタビュー

周囲からは反対もされましたが、整備士になって正解でした

  • 堀内翔麻さん(34歳)。資格が取れる仕事を探していた矢先、好きなバイクの整備に関われるT-REXの求人に応募した。現在は多忙ながら、やりがいのある毎日を送っている。

  • 堀内さんは未経験からスタートし、働きながら整備士免許を取得。資格は三級、二級と着実にステップアップしている。

  • 作業は基本的に客先で実施することが多く、リフト付きのトラックで取引先様へ移動する。お客様とのコミュニケーション能力も必要だ。

充実したサポートで三級免許を取得、働きやすい柔軟な職場です


――飲食店や内装屋などで働きながらプロのミュージシャンを目指していたという経歴を持つ堀内さん。現在はT-REXで正社員の整備士として、主にビジネスバイクの点検整備、修理などで大活躍している。実際の働き方やキャリアアップの仕方、職場環境などをじっくり訊いてみた。

堀内翔麻さん(2019年2月入社):
大学生の頃にバイクに乗り始め、ツーリングなどを楽しんでいました。30歳の節目が近づき、手に職のある正社員として、資格を取得できる仕事に就きたいと考えるようになり、自分の好きなバイクに関われるT-REXの求人広告を見つけました。

プライベートで自分のバイクの簡単な整備などはしていたことがあり、機械いじり自体も好きでしたが、仕事としての整備は未経験でした。入社当初は先輩からマンツーマンで指導を受け、整備のことはもちろん、仕事の流れ、手順などを教えてもらいました。私の場合、整備する車両がほぼ法人向けのジャイロXのみなので、整備のやり方は覚えやすかったです。おかげで3~4か月ほどで取引先様に一人でメンテナンスに行けるほど成長できました。

働きながら、まず三級整備士免許を取得し、次は二級に挑戦します。三級整備士は会社がしっかりサポートしてくれたので、とてもスムーズに取得できたと思います。

T-REXで働いている中での個人的なイメージは、IT企業でサーバーの保守や、飲食店の設備点検をやっている現場のエンジニアさんに近い印象です。お客様が安心して仕事に使ってもらえるよう設備や道具を維持、管理していくイメージですね。整備プランや工程は工程管理の専門部署で作成されます。整備士の意見も取り入れた無理のない範囲の工程で組んでもらえています。

職場はコミュニケーションが取りやすい雰囲気かつ、適度な距離感があって、仕事がしやすいです。日々の相談やアイデアは上司に話しやすく、そこでフレキシブルに動いてもらえる環境なのもいいですね。例えば、出先での日常点検は主に自社トラックの荷台で行うのですが、最近の夏場は暑さが過酷です。社長に相談したところ、トラックの荷台を改造して冷房をつけてくれることは可能かを調べてくれています。

自分がメンテすることで、お客様がきちんと仕事できるようサポートできることは大きなやりがいですし、お客様とコミュニケーションするのも楽しい。そして収入、休暇などの待遇面は非常に満足しています。入社前に親や年配の方から「バイクの整備士はやめておけ」と忠告されましたが、今では整備士を選んで正解だったと思います。


――応募を考えている方へのメッセージを伺うと「未経験の方でも資格が取得でき、休みもしっかり取れて、きちんと将来の生活設計ができるので安心してください」と堀内さん。
今後は「契約頂くクライアント様の幅を広げられるような、新規開拓をしたい」と意欲を語ってくれた。
働きやすい職場で充実した毎日を送り、整備士に留まらないさらなる飛躍を考えているようだ。

JOBIKE編集部より

今までJOBIKEで様々なバイクショップを取材させていただいたが、とりわけT-REXはユニークだ。
法人向けビジネスバイクのメンテナンスを主力としている点は一般的なバイクショップと大きく異なる。昔ながらのバイク販売店の常識にとらわれず、ビジネスというものに正面から向き合い、堅実に利益を生むために頭脳をフル回転させた結果だろう。
一流の経営者でも混迷を極める未来の予測は困難だが、バイク販売店の社長でここまで独自の“攻め”の姿勢とビジネスセンスを持ち、成功を収めている方を筆者は寡聞にして知らない。こうした社長の元で働いてみたい方も多いのではないだろうか。
そして今後ますます整備士の存在が貴重になると分析し、理想論ではなく、実際に業界最高水準と言える高待遇を達成している。これも堅実なビジネスモデルと柔軟な思考があってこそだ。整備士という職業を“一生の仕事”として続けたい人にとって、T-REXはまさに理想的な職場になるだろう。

JOBIKE編集部より

ショップインフォメーション

T-REX

〒182-0015
東京都 調布市 八雲台1-4-4
電話:042-490-8900
営業時間: 9:30-18:00
定休日 : 月曜日
HP : https://trexnet.jp/
EMAIL : info@trexnet.jp

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