取材協力:モトウイング須賀 取材:小松男
掲載日:2024/02/26
東京都板橋区の中山道沿いに位置し、創業から64年を数える老舗バイクショップ『モトウイング須賀』。長い歴史を持ちながらも、2022年に改装リニューアルが行われた店舗はモダンな温かみと清潔感が溢れている。
古き良き時代の伝統を受け継ぎつつも、しっかりと未来を見据え、これからのバイク文化を担う存在であることを窺い知ることができる同店。現在スタッフを募集中ということで、足を運んでお店の素性そして魅力を探ることにした。
今回紹介する『モトウイング須賀』は1960年(昭和35年)に創業。私はバイクメディアに携わるようになって20年近くになり、多くのバイクショップに訪れてきたが、時代の移り変わりや長引く不況などで惜しまれつつも閉業されてしまったショップも少なくはない。そのような中、長く続けられていることはバイク業界の隅に身を置くものとしても嬉しいことであるし、さらに話を聞いた所によると、近年では以前にも増して成長を続けているということなのである。
そんなモトウイング須賀がこれまで歩んできた歴史、そしてビジネスに関することなどを、現在代表を務められている須賀譲之助さんに伺うことにした。
「私の祖父にあたる創業者、須賀進之助が目黒区の須賀自動車から独立し、板橋区にモトウイング須賀の前身となる須賀サイクルを開業したのが昭和35年のことです。平成2年には父の須賀進が2代目社長に就任しました。そして私が3代目となります。
60年以上もの間、中山道沿いのこの地でバイクショップを営んできたわけであり、私も生まれた時からバイクショップの子どもでした。現在の店長は私が子どもの頃からお店を支えてくれていますし、昔バイクを買っていただいたお客様が結婚し子どもを育て、そのお子さんもバイクに乗るようになられた方もいらっしゃるなど、この土地に根付いていると思っています。
モトウイング須賀は昔から“営業よりも技術”に力を入れてきました。売りっぱなしにするのではなく、購入後のメンテナンスまで真摯に行うことで長いお付き合いをさせていただくことができるのです。
ここ数年の話で言えば、令和4年には一層お客様が気軽に足を運びやすくなるよう改装リニューアルを行ったことや、バイクブーム的な流れにより流通台数が追い付かないような中でも潤沢に車両を提供できたために、遠方から来られる方や女性のお客様も増えました。最近ではオリジナルのアースカラー仕様や、純正オプションなどを備えたライトカスタムモデルも手掛け、他店との差別化に務めております。
販売台数が増えたことや今後の成長も考えて新たにスタッフを増員したいと考えています。未経験者でも結構ですが、バイクに興味を持っており触れる方が良いですね。これから将来のことを考えている若い方はもちろん、30、40代でもコミュニケーションを取って作業を進められる方であれば問題ありません。モトウイング須賀を一緒に支えてくれる方は是非、声を掛けてください」。
昔ながらのバイクショップ、しかも東京23区にあるような店舗だと、アブラ臭くてシャッターもあけたままの、ふきさらしの中、だるまストーブを囲んでツナギにドカジャンを羽織ったオジサンに対応してもらう……。というのが我々昭和世代のイメージだが、モトウイング須賀は老舗でありながらそんなイメージを覆してくれる。
例えば昭和、平成、令和と時代に合わせて店舗をリニューアルすることで、今ではカフェのような雰囲気すら漂っているし、さらにペイペイなどの電子決済にも対応することでイマドキのお客様にもしっかりと対応する。一方で、効率化や作業性を高めるために整備用のリフトを導入するなど仕事を行うスタッフに向けた職場環境改善も怠りない。
モトウイング須賀は長い歴史を持ち、年月をかけて培ってきた技術や経験を継承することができるだけでなく、現在、そしてバイクショップがあるべき姿の未来までをイメージさせてくれるのだ。
モトウイング須賀の沿革は前述した通りで、板橋の地、中山道沿いに60年以上続くバイクショップである、初代から現在の3代目になるまで『WHEN YOUR SATISFIED WE’RE SATISFIED(お客様の満足が我々の満足です)』という社是を掲げ、それを貫いてきたからこそ今の姿があると考えて良い。
ビジネスの方向性だけで言えば、例えばスポーツモデルやオフロードモデルなど車種やセグメントを絞り、そこに注力することでショップにキャラクターを持たせるというやり方もあるが、モトウイング須賀では特定のジャンルへ特化させるのではなく、満遍なく取り扱うこと、さらには販売、そして整備メンテナンスというバイクショップの基本となるベースをしっかりと固めることで、お客様から支持を受けてきた。
さらには攻めの姿勢も怠っていない。例えば法人向けの間口を広げてきたことで、定期的に纏まった販売やメンテナンスの仕事を受けることができている。エンドユーザーのみならず法人顧客も含めてのお客様ファーストという理念がブレることなく、時代に合わせて進化を続けてきた。それがモトウイング須賀の成長の秘訣の一つであろう。
“入社したのは32年前?ん?33年経つかな?”と笑いながら話始めてくれたのは、モトウイング須賀の店長を務め、会長を除いて現在最も長い在籍年数を数えている鐘築義勝さん。長い年月に渡り見続けてきたモトウイング須賀というバイクショップのことを、どのように感じられているのか話を伺うことにした。
鐘築義勝さん(1991年入社)
「実は元々私の父親がモトウイング須賀でバイクを買い、客として出入りしていていたんです。そのため私は小学生の頃から父に連れられて店に通っていました。私の世代はレーサーレプリカブーム真っただ中だったことや、私自身もバイクが好きだったので、学生時代にアルバイトとして雇ってもらい、その後20歳で正社員となりました。
入社した頃はレーサーレプリカから、ネイキッドやアメリカンにブームが変わる時期でした。流行が変わるとカスタムの方向性などにも変化がありました。ストリートバイクではスカチューン、ビッグスクーターのブームが訪れるとオーディオの取り付けなど、長い間バイク業界にいるので色々と経験できたことは嬉しく思っています。
そんな中でモトウイング須賀にも変化はありました。以前は昔ながらの町のバイク屋さんだったので、就労時間が長くキツイ、オイルのニオイが漂い、夏はとても暑くて冬はめちゃくちゃ寒いという環境でした。それが当然という時代でしたしね。今では残業はほとんどなく、週2日の休みもいただいています。店舗内はもちろん、バックヤード兼整備工場も冷暖房完備です。とても働きやすくなりました。
スタッフとしては、綺麗好き、そして細かい作業もできる性格だと働くのに向いていますし、きっと楽しんでもらえると思います。年齢や性別は関係なく働ける環境です。長く一緒に働いてほしいですね。」
JOBIKE編集部より
町のバイクショップ的なスタイルのお店では、後継ぎ問題に直面している事例を多々見ている。そのような中で今回取材したモトウイング須賀はこれからのバイクショップの一つの未来図を感じさせてくれるものだった。
モトウイング須賀は先だって 『いたばしgood balance会社賞2023』を受賞している。これはワーク・ライフ・バランスやダイバーシティ&インクルージョンの推進に積極的に取り組んでいる企業などを表彰するもので、2023年度は区内の8社のみが受賞しその一社となった。
受賞のポイントとなったのは、作業の高効率化を図るためにマニュアルをアレンジしておりそれが実益に現れていること、口頭では伝わりにくい作業などは内容をデータ化しクラウド上でスタッフ同士情報共有ができていること、そして余裕のあるスケジュール管理が行えていることなどだ。これらが“綿密な相談による顧客満足と従業員満足を両立できている”と認められたのである。
ホンダの新車を中心としつつ、400cc以上のユーズドバイクなどの取り扱いも始めているほか、学生のインターン教育なども受け入れている。
地元に密着した経営スタイルというのはよく聞かれる言葉だが、このような強固な取り組みと顧客基盤があって始めて成立する。
長期的なライフプランも立てやすく、過負荷のない環境で腰を据えてスキルを磨き、長い歴史に貢献する。バイク業界で働くに当たって、実に素晴らしい選択肢ではないだろうか。
JOBIKE編集部より
モトウイング須賀
〒〒173-0013
東京都板橋区氷川町19-11
電話:03-3961-1953
HP : https://motowing-suga.com/
EMAIL : bike@mw-suga.com