取材協力:東海オートトレーディング株式会社 取材:淺倉 恵介
掲載日:2023/09/25
愛知県豊田市に店を構えるバイクショップであるトーカイオートと、BMW正規ディーラーMotorrad Toyotaを展開する、東海オートトレーディング株式会社が新規スタッフを募集中。
募集職種は営業、メカニック、事務。同社では2024年夏に新店舗のオープンを予定しているため、大幅なスタッフ増員を計画中。創業50年を超える老舗が求める人材とは? そして東海オートトレーディング株式会社とはどういった会社であるかを、社長とスタッフのインタビューを通して探ってみた。
東海オートトレーディング株式会社 代表取締役社長 長坂賢司さん。愛知オートバイ事業協同組合 副理事。1982年、愛知県豊田市に生まれ、同地で育つ。東海オートトレーディング株式会社は長坂さんの実父である現会長が設立した会社であるが、長坂さんは大学卒業後に別業種の企業に就職。2010年、27歳の時に東海オートトレーディング株式会社がMotorrad Toyotaをオープンさせるにあたり新規スタッフとして中途入社。同店の店長を務めた後、2019年10月より現職。愛車はBMW R-18 ClassicとHRC GROMレーサー。
―――東海オートトレーディング株式会社は現在国内4メーカーの新車中古車を取り扱うトーカイオートと、BMW正規ディーラーのMotorrad Toyotaの二店を運営している。
家業ではあるが、もとは継ぐつもりがなかったとのことだが、BMW正規ディーラーをスタートさせるというタイミングで、先代からの頼みもあり、入社することに。
いわゆる“家業を継いだ”形だが、長坂さんは凡庸な二代目ではなかった。会社の改革に乗り出したのであった。
東海オートトレーディング株式会社 長坂賢司社長:最初に考えたのは、弊社を“ちゃんとした企業”に生まれ変わらせることでした。
一例ですが、それまでの営業形態はいかにも昔ながらのバイク屋さんで、営業時間すらあやふやでした。本来であれば閉店している時間なのに、いつまでも店が開いていたり……。現在は、閉店18時、仕事終わり18時半を徹底しています。勤務時間が短くなって社員も喜ぶと考えていたんですが、意外なことにスタッフからの反発がありました。特にメカニックから“それでは仕事が終わらない“と不評だったんです。意欲があるのはありがたいことですが、それでは労働環境として良くありません。
自分の経験してきた健全な企業の形とは、かけ離れていました。現場の人間と何度も話し合い、しっかりと説明して方針を理解してもらいました。現在では、時間を有効に活用し、効率を考えて仕事を進めてもらえるようになりました。皆すっぱり定時で帰社してもらえています。
閉店から仕事終わりまでの間は、可能な限り多くの時間を社員と会話するようにしています。会社の今後の方針や何故そう考えたかなど、プロセスから説明するようにしています。研修や勉強会も行っていますね。
仕事をする上で“なぜ、この仕事が必要なのか”を理解すれば、目的意識や労働へのモチベーションが上がると考えています。私から指示した内容に対して、社員から改善のアイデアが出てくることも多い。嬉しいですね。目標に向け、自分なりの仕事の進め方を考えながら働いた方が、楽しく働けると思いますから。私は“仕事を科学する”という言葉が好きなんです。
仕事を仮定と結果で考える。例えば、あるキャンペーンを展開したら、すごく好評だと仮定します。実際にやってみたら失敗するかもしれない。でも、成功すればすごく嬉しい。そうした仮定がある内は、仕事が楽しく感じられるのではないでしょうか?
まあ、仕事を科学するという言葉は、私が作ったものなのですが。(笑)
バイクが好きであること。明るくて、お客様のために汗をかくことを厭わない。お客様が喜んでくれるのを、自分のこととして喜べるというのが理想です。
会社の未来としては、社員が皆で成長していけることを望んでいます。社員が成長すれば、会社も成長するはずですから。売り上げとか、業務の拡大とかは、後からついてくるものだと考えています。
―――頭ごなしに業務内容を指示強制するのではなく、社内の理解を得るために何回でも話し合う。それが長坂さんの経営スタイルだ。社内のコミュニケーションを、何よりも重要視している。
代表自身が全くの別業種からの遷移であるという点は、今この記事を呼んでいる別業種のあなたにも踏み出す一歩のきっかけとなってくれるのではないだろうか。
--ここでご登場いただく鈴木康史さんは、トーカイオートの営業スタッフ。入社して、まだ半年ほどという新人だ。
初めてのバイクをトーカイオートで購入したという浅からぬ縁もあり未経験の営業職として門を叩いた。
前職の上司から“そんなに好きなんだから、バイクの仕事をした方がいいよ”と言われたんです。思い返せば、今までの勤務先は自分から働きたいと強く願ったものではなく、他人から薦められたり条件が合ったりと、流された形で就いたものばかりでした。トーカイオートで働くことを決めたのは、バイクが大好きだから自分で望んだことです。
人と話すことが好きなので、営業という仕事に悪いイメージはありませんでした。接客は楽しいです。お客様もバイク好きですから、商談中に話が盛り上がるとスゴく嬉しいですね。商品知識が足りなかったり、接客で悩むこともあります。ですが、やりがいを感じますね。久々に会った友人に、表情がイキイキしていると言われました。
未経験が故に営業はバイクを売ることばかりが仕事だと考えていたんですが、業務は想像以上に多岐に渡るものでした。書類仕事や発注、納車前の洗車したり担当した車両を車検場へ持ち込んで検査を受けたり……。在庫車両の情報をネットに掲載するのも仕事です。中に入ってみなければわからなかったことは多いですね。
趣味を仕事にすることに葛藤はありましたが、仕事をしてバイクに向き合ったことで、また違うものが見えてきました。バイクを通じて多くの人との出会いがあります。今は、それを楽しんでいます。
ユーザーの頃とは違った視点で捉えている社内イベントも楽しみです。半年に1度ほどですが社員でツーリングに出かけたり、オフロードコースを借り切って皆で走ったり。そんな時は、社長が先頭を切って走り回っていますね。(笑)
まだまだ分からないことが多くて、先輩方に迷惑をかけてばかりですが、社内の雰囲気も良く、毎日が充実しています。
早く、全ての仕事を自分でこなせるようになるのが、当面の目標です。いつかは店長になりたいですね!
本当にバイクが好きなら、仕事として取り組んでみるのは一つの選択だと思います。それが良い結果に繋がることもある。自分がそうでした。バイクが好きな人なら、ぜひ一緒に働きたいですね!
--メカニックの緒方哲也さんも入社したばかりで、インタビューした時点でまだ入社2ヶ月目。とはいえ、バイクメカニックとしてのキャリアは25年を数える大ベテラン。業界を知り尽くしたプロは、東海オートトレーディング株式会社の労働環境をどう評価するのか?
非常に働きやすい職場ですね。整備部門のマネージャーが、タスク管理をしっかりやってくれますので、仕事の割り振りや時間配分に頭を悩まさずに済みます。例えば、お客様の修理依頼も、しっかり予約をとってあるので、作業にかかりやすいんです。待たされることもないので、お客様にもメリットだと思います。決められた時間内で、しっかりと結果を出すという意識が徹底されています。なかなか出来ないことだと思います。
あとは、冷暖房を完備していることは有り難いですね。おかげで、この夏を乗り切れました。(笑) 工具や工作機械も、必要なものはしっかりと揃えられています。バイクショップ、バイクディーラーとしては、かなり充実した設備が備えられています。
多くのメーカーの車両を取り扱っているので、メーカーによって異なる機械の“クセ”を掴みきれず戸惑うことはありますね。自分はカワサキ車の経験が少ないもので、わからない部分もあります。ですが、そんな時は周りの経験豊富なメカニックが教えてくれるので有り難い。気軽に聞ける雰囲気がいいんですよ。一緒に働いているメカニックは、皆面白い人ばかり。バイクとメカが好きという共通項がありますから、話していても楽しいです。
また、メカニックとフロント間での連携対応もとても素晴らしいです。
先日、入庫した車両が納車前に不具合が発生しました。当然そのまま納車するわけには行きませんから、お客様に事情を説明し、納期が遅れることや発生する費用についてもお話ししましたが、すぐに納得していただけました。
お店が積み上げてきた信用があってこそだと思います。スタッフの対応も素晴らしかったですね。トラブル原因の特定や対処法を確定させ、必要な部品の発注も済ませ、納期や費用をしっかりと提示しましたから。
ここでは様々なメーカーのバイクが、次々と入庫してくる環境です。目まぐるしい毎日で、覚えなければならないことも多い。
ですが、多くの車種に触れられるのは、技術を磨き知識を広げるチャンスだと思います。とても働きやすい環境ですし、メカニックとして上を目指すのであれば、とても良い職場ですね。
---今回は営業スタッフとメカニックのお二人にインタビューさせて頂いたが、二人とも終始雰囲気が良いと言っており、他のスタッフも皆活気が有り、どこか晴れやかな面持ちで仕事を楽しんでいるように見えた。
新しい知識や経験を嬉々として受け入れる風土の職場であることは間違いなさそうだ。
JOBIKE編集部より
成功しているバイクショップは、カリスマ的な経営者が率いている例が少なくない。社員数がそう多くない企業では多く見られることだが、トップの個性が会社のキャラクターに直結しており、バイクショップの場合そのキャラクターに引き付けられている側面がある。
それは良い面でもあるが、社内的にはトップの独断が先行する状況を招きやすい。東海オートトレーディング株式会社の長坂代表からは、そうした独善的な匂いが感じられない。もちろん、社長として決断すべき部分はキッチリと決めるリーダーシップはある。だが、強権をかざすことなく、社員への理解を求める努力を怠らない。だからこそ、スタッフは皆“働きやすい”と口を揃えるのだろう。
東海オートトレーディング株式会社では、BMWこそディーラーとしてビジネスを行っているが、国内4メーカーに関しては正規販売店ではあるが専売ディーラーではない。現状、国内メーカーは専売ディーラー化によって、ユーザーを囲い込む販売戦略をとっている。
専売ディーラーでない販売店は、取扱車種が限られ難しい立場に置かれているのが実情だ。だが、同社は専売ディーラーには不可能な小回りの良さを活かして、様々な独自のサービスを提供しユーザーからの支持を得ている。例えば、トーカイオートのサービスパッケージ「娯車整」がある。
これは、新車購入時に付けられる整備費用がディスカウントされるサービス。メーカーのサポート無しで、店舗独自で提供しているのだから、なかなかに思い切ったものだ。面白い。環境問題への対応など、バイクを取り巻く環境は不透明な部分が多い。そんな中、生き残っていくのは、こうした柔軟で独自性のある発想力を持つ企業なのかもしれない。
JOBIKE編集部より
東海オートトレーディング株式会社
〒470-1205
愛知県豊田市永覚町下長38
電話:0565-21-0511
営業時間: 10:00~18:00
定休日 : 毎週水曜日・第1火曜日
HP : https://www.tokai-auto.co.jp/
EMAIL : kenji.nagasaka@toyota.bmw-motorrad.jp