取材協力:ドゥカティ浜松 取材:小川 勤
掲載日:2025/07/24
ドゥカティ浜松の母体となる中央モータース商会は、終戦間もない日本社会が激動していく中で創業。ドゥカティとの付き合いは1967年に遡る。そんな老舗バイクショップがサービスとセールススタッフを募集。
鈴木代表と奥様の麻帆さん。ショップ前の花壇は鈴木代表が管理。麻帆さんはフランス料理店で働いた経験を活かし、店内の清潔感にこだわる。
ショップがある静岡県浜松市は冬でも雪が少なく、1年を通して日常的にバイクをよく目にする街だ。海と山があって周辺にはホンダやヤマハ、スズキといった日本を代表するメーカーの生産拠点がある街である。
今回、取材で訪れたドゥカティ浜松の母体である中央モータース商会は1952年4月1日に創業した老舗バイクショップだ。
浜松米軍基地の米兵が所有するハーレーダビッドソンやトライアンフ、陸王、BSAなどの修理を行うショップとしてオープンしたのが始まりだ。
本田技研工業の創業が1948年で、スズキが初のバイクを発売したのは1953年。その当時から浜松で外車を扱い続けているから驚く。同店がドゥカティを取り扱い始めたのが1967年。当時の輸入元より同店に最初にやってきた車両はイエローの350デスモだった。この時から現在に至るまでの間、ドゥカティを取扱い続けているディーラーは他に無いかもしれない。
筆者のドゥカティ浜松の印象は、お客様同士の仲が良く、そんなお客様が慕うショップだ。原動力になっているのはスタッフの力。“長くお店を残して欲しい”や“売った者の責任と売りっぱなしの商売をするな”は、先代の木村 満洲雄社長の思いであり、スタッフの全員が受け継ぎ、お客様に寄り添っている。 ショップへ入るとサービスとセールスの一体感が伝わってくる。それが安心や安全、長くドゥカティを楽しむことができる環境へと繋がっていることが分かる。この取材ではスタッフの全員にお話を伺った。そして驚いたのは、スタッフの皆がドゥカティ浜松でサービスやセールスを初めての仕事として、スタートしていることだった。
鈴木代表:ドゥカティは単純なモーターサイクルというよりは、人生を豊かにしてくれるもの。お客様も「ここが好き」という芯を持った方が多いです。良い仕事をすればお客様も満足してくれるし、その瞬間を知ると「こんなに良いバイクはないな」と思います。そしてドゥカティをより楽しんで頂く、よりドゥカティが好きになる環境を作りたいと思っています。それはお客様もスタッフも同様です。
今回はサービスとセールスを募集します。経験は問いませんが“スパナってなんですか?”という1から学ぶ姿勢だと少し難しいかもしれませんね。お客様にはできる限り寄り添いたい。当店は新車の他、古いドゥカティを見ることもありますが、どんな時も柔軟にマニュアル通りの対応じゃないのが強みといえます。そのためスタッフには判断力が求められます。マニュアル通りの作業の方が時間は読みやすく仕事をしやすいのかもしれませんが、こうした環境を楽しいと思える人の方が良いのかもしれません。
ドゥカティ浜松はここ数年、過去最高の売り上げを更新し続けている。またディーラー・オブ・ザ・イヤーやトップアパレル、トップサービスなど様々な賞も受賞している。ビジネスは堅調かつ堅実だ。
鈴木代表:バイクは趣味の世界ですから人間性や熱意が大事な仕事です。ただ、どんな良い人でも働く環境が悪ければ、良い人間性にはならない。そのためにスタッフの働く環境づくりに気を配っています。今後は固定費を減らして、なるべくスタッフに還元したいと思う。当店はソーラーパネルなので電気代はかかりません。来年は井戸を掘って水道代もかからないようにしたいなと(笑)。こうした施策は何かの災害があった時に近隣住民の人助けにも繋がります。そして固定費を抑えればその分、スタッフを増やすことができ、それは休みを取りやすくなることに繋がります。
今後はイタリアのドゥカティが求める「これがドゥカティストアの理想形」というお店を目指し、さらにお客様や近隣の人たちに寄り添ったお店にしていきたいと思います。将来的にはチャンスがあれば、店舗を増やしたいとも思っています。そのためには、やはり人員が必要です。店舗拡大は、そんな甘いものではないことを分かってますが、その時のタイミングだったり、状況が揃えば、ぜひチャレンジしたいです。
「当店は勉強して成長していける職場です。2026年はドゥカティ創業100周年の年。イタリアにも行けたらいいなと思います」と柘植さん。
柘植さん:メカニック経験は無く、入社後に3級自動車整備士の資格を取得し、現在は2級取得に向けて頑張っています。資格取得に関しては就業中に行かせてもらうことができ、金銭面も全額サポートがあります。また工具購入もサポートしてもらっています。さらにドゥカティジャパンが行う研修にも年に5~6回は行かせてもらっています。これはセールス研修なのですが、当店は浜松周辺でイベント出店することも多く、そういった時にも役立ちます。またセールスの気持ちが分かるのもメカニックとして大切なことなので、とても勉強になります。
残業はあっても1日に2時間ほど。働くサイクルとしては週6勤務の日が月に2回くらいありますが、1ヶ月に1回のローテーション休暇という、好きな場所(日)を休むことが出来る制度もあります。結果、週6勤務は実質1週間だけですし、連休にしたり自由度もあって、また有給もあります。
「バイク好きが高じてサービススタッフになりたいと思っている人も多いと思います。仕事後や休日に好きなバイクを触ったり、乗ったり出来、その心のゆとりがお客様とのコミュケーションの取りやすさに繋がっています。残業で切羽詰まってしまい、余裕が無くなるような状況はありません」と田村さん。
自動車系専門学校卒業後、2007年に入社した田村 直生さんは39歳。学生の頃にアルバイトとして働き始め、その後社員となった。
田村さん:高校生の頃からMotoGPを観ていてドゥカティの強さを知り、ドゥカティで働きたいと思いました。ピットは広く冷暖房も完備。働きやすい環境です。社長がメカニックなのでサービスの気持ちを分かってくれ、サービス環境にも気にかけてくれています。
当店はお客様ファースト。そのため、1店舗あたりのスタッフは多いと思います。そうすることでお客様の納期や要望に応えています。ショールームと変わらない広さのピットがあるお店は中々無く、伸び伸び働くことができます。当店のメカニックは世代もキャリアも異なる3人です。なぜか(笑)皆とても仲が良いです。新しい人が来ても、誰かが忙しくても、誰かが気に掛けることができます。学ぶ場所としても、とても恵まれた環境だと思います
「今でも走るのが大好きでミニバイクなどにも乗っています。スタッフと一緒にサーキットに行けば、走り方のアドバイスもします」と八木さん。
工場長の八木 要さんは、鈴鹿8耐に2度参戦した国際ライダー。サービスだけでなく試乗車のセットアップも施す大ベテランで、2023年と2024年にはトップサービスを受賞した立役者でもある。
八木さん:先代社長に誘われ、メカニックとして入社したのは2008年。以前からレーサーの整備は自分で行なっていましたが、ドゥカティを整備するようになったのは入社してから。会社のサポートで整備士免許2級まで取らせてもらいました。工具のサポートも大きいです。最近は仕事の効率が上がっていますが、お客様も少しずつ増えていますから、お客様に寄り添うためには、さらに強化が必要です。
バイクや機械が好きな人が来てくれるのが理想ですね。セールスとサービスのコミュニケーションもしっかり取れているのは、社長がメカニックだから。どうすれば、サービスが仕事をしやすいかを常に考えてくれており、安心できます。
「サービスの柘植とは金曜日の夜にラーメンを食べに行きます。私も入社したばかりの頃、先輩の田村によくツーリングに連れていってもらいました。それで道やツーリングスポットを覚えました」と青木さん。
青木さん:大学生の頃からハイパーモタードが好きで、ドゥカティに携わる仕事がしたいと思っていました。お客様は優しい方が多いです。お客様同士も仲が良く、お店とお客様の距離も近い。月に1回ほどのツーリングはもちろん、忘年会やビアガーデンでの飲み会も実施しています。イタリアにも社員旅行で、2回ほど行きました。ドゥカティの本社にも行くことができたし、セールスとして貴重な体験となりました。サービスへの作業指示書は、的確に書くことを心がけています。オイル交換だけでなく、十人十色のお客様の声や症状もきちんと伝えるためです。
ドゥカティ浜松に向いていると思う人は、素直な方。サービス業ですから残業をすることもありますし、接客だけでなく重たいものを運んだり、屋外で作業したりします。そういったことを素直に受け止めて、スムーズに動ける人が好ましいです。仕事なので大変なこともありますが、子供の行事などあれば休みを取ることができ、家族との時間を大切にすることもできる職場です。
馬場さんはドゥカティ浜松のブログ更新も担当。ドゥカティのマニアックな部分にも切り込んでいるのが印象的だ。
モンスター696に乗る馬場 美紗稀さんは、2017年に新卒で入社。2022年と2023年、2024年の3年連続でトップアパレルのセールス受賞に貢献。
馬場さん:ドゥカティ浜松はディーラーですが、昔ながらのバイクショップらしいところがありつつ、メーカーの品位のあるショップでもあります。ドゥカティに乗って楽しいと思ってくれる人が増えると、私たちスタッフも嬉しいです。アパレルは新車購入時はもちろんですが、興味のありそうなお客様には新製品が入り次第ご連絡します。サービスとの連携は難しく思う方もいるかもしれませんが、分からないことはサービスが助けてくれます。その際、自分も勉強をしながらお客様に説明をします。
先日はNEWパニガーレV2のアンベールパーティを実施。お店を一度閉めてから軽食を用意してお披露目したところ、40人近いお客様にお越しいただけました。このような自分がやりたいと思ったことをやらせてもらえるのもドゥカティ浜松の特徴です。
JOBIKE編集部より
植物のあるお店は良い。風通しが良く明るく、何よりもスタッフが植物にまで気を使える環境だからだ。当然、植物は世話をしないと枯れてしまう。枯れないようにする気遣いは、まさにお客様への気遣いと同じことと僕は思う。
以前、鈴木代表と一緒にスクランブラーデザートスレッドで、一緒にオフロードレースに出たことがある。その時、鈴木代表はテントのテーブルに花瓶を置きお花をいけた。ショップの前には季節のお花を植えて、店内には一輪挿しがある。また以前、キャンペーン中にお店へ伺った時に(僕は)小さなブーケットを頂いたこともあり、なんとなく「鈴木代表=お花」の印象が強い。
そんな鈴木代表を支える奥様の麻帆さんは同店のセールススタッフ。2022年から3年連続でトップアパレルを受賞した立役者である一方、スタッフの働く環境にも気を配る。残業は?と聞くと「無いって言いたいのですが、あります。嘘はつけない」と鈴木代表。「いやいや、無くしたい」と麻帆さん。お二人は何度もせめぎ合う。もちろん残業は無い方がいい。ただ不思議なことにサービススタッフで、それを不満に抱えているのは、僕の印象では無かった。そしてサービスの環境がこれほど良い店を僕は知らない。
「週末ツーリングに行きたいからタイヤ交換をお願いします」と、その時にタイヤを見て減っていれば、それはお客様の安全が担保されないことで、そうなると交換をしましょうとなる。どうしてもお客様に寄り添う気持ちが強く、つい残業になってしまうことは、否めないのであろう。お客様にもお花にも優しく寄り添えるお店。それが僕の知っているドゥカティ浜松である。そんなショップで働く機会がある。
JOBIKE編集部より
ドゥカティ浜松
〒435‐0034
静岡県 浜松市中央区 安松町21-6
電話:053-411-8880
FAX:053-411-8881
営業時間: 10:00~19:00<br />
(土/日)9:00~18:00
定休日 : 水曜日・第1・第3・第5火曜日
HP : https://ducati-hamamatsu.com/
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